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話は戻り、卒業式が終わった後。
突然、仁藤から呼ばれた俺は誰もいない生徒会室に案内された。
この時、俺は男に対して警戒心の欠片すら持っていなかった。
(何で彼女の茜じゃなくて、俺?)
そう思いながら生徒会室に案内された俺に、仁藤からとんでもないことを打ち明けられたのである。
『実は俺、茜よりもお前の方が好きなんだ。』
一瞬、頭が真っ白になった。
今なんて言った?
女の茜じゃなくて、男の俺が好き?
呆気になっている俺に、仁藤は行動を起こした。
俺の方に近付いたと思った途端、いきなり抱きついてきたのである。
そして俺の耳元で『茜よりも菅生が好きなんだ!』と囁き、突如として俺にキスをしようとしてきたのだ。
「ふざけるな!」
バキッ!
俺の鉄拳が、見事に仁藤の顔面にヒットした。
俺は『ふざけんな!』と一喝すると、ダッシュで生徒会室から飛び出した。
十五年間生きている中で、一度も告白されたことがない俺だけど、まさか初めて告白されたのが同性で、しかも双子の姉の彼氏だなんて・・・・。
笑えねえ。
学校から飛び出し、家に着いた途端、俺の頭は一気に冷めた。
ここで問題だ。
正直に茜に話すか、内緒にするか。
冷めたとしても、その二つの考えが頭の中に浮かび上がると、俺は再び大パニックを起こした。
元々サッカーバカの俺に、恋愛に対しての免疫が全くない。
考えても良い案が浮かぶわけもない。
散々悩んだ結果、内緒にしようと思ったのだが・・・。
現実は思った通りにはいかないものだ。
一時間後、茜が物凄い形相で帰って来たのである。
そして俺の部屋に入るなり、カバンを投げつけたのだ。
「優のバカ!他人の彼氏を奪うなんて最低!」
「はっ?」
「一哉に言われたのよ!『俺はお前よりも菅生の方が好きなんだ!』って!」
「・・・・・。」
(バカ正直と言うか、なんていうか・・・。)
黙り込んでいる俺を無視して、茜が泣きながらヒスを起こしている。
泣きたくなるのは分かるけどな。
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