初恋のち自覚 そして失恋

3/7
前へ
/122ページ
次へ
 話は戻り、卒業式が終わった後。  突然、仁藤から呼ばれた俺は誰もいない生徒会室に案内された。  この時、俺は男に対して警戒心の欠片すら持っていなかった。 (何で彼女の茜じゃなくて、俺?)  そう思いながら生徒会室に案内された俺に、仁藤からとんでもないことを打ち明けられたのである。 『実は俺、茜よりもお前の方が好きなんだ。』  一瞬、頭が真っ白になった。  今なんて言った?  女の茜じゃなくて、男の俺が好き?  呆気になっている俺に、仁藤は行動を起こした。  俺の方に近付いたと思った途端、いきなり抱きついてきたのである。  そして俺の耳元で『茜よりも菅生が好きなんだ!』と囁き、突如として俺にキスをしようとしてきたのだ。 「ふざけるな!」  バキッ!  俺の鉄拳が、見事に仁藤の顔面にヒットした。  俺は『ふざけんな!』と一喝すると、ダッシュで生徒会室から飛び出した。  十五年間生きている中で、一度も告白されたことがない俺だけど、まさか初めて告白されたのが同性で、しかも双子の姉の彼氏だなんて・・・・。  笑えねえ。  学校から飛び出し、家に着いた途端、俺の頭は一気に冷めた。  ここで問題だ。  正直に茜に話すか、内緒にするか。  冷めたとしても、その二つの考えが頭の中に浮かび上がると、俺は再び大パニックを起こした。  元々サッカーバカの俺に、恋愛に対しての免疫が全くない。  考えても良い案が浮かぶわけもない。  散々悩んだ結果、内緒にしようと思ったのだが・・・。  現実は思った通りにはいかないものだ。  一時間後、茜が物凄い形相で帰って来たのである。  そして俺の部屋に入るなり、カバンを投げつけたのだ。 「優のバカ!他人の彼氏を奪うなんて最低!」 「はっ?」 「一哉に言われたのよ!『俺はお前よりも菅生の方が好きなんだ!』って!」 「・・・・・。」 (バカ正直と言うか、なんていうか・・・。)  黙り込んでいる俺を無視して、茜が泣きながらヒスを起こしている。  泣きたくなるのは分かるけどな。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

944人が本棚に入れています
本棚に追加