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俺が黙っているのいいことに、茜が俺に対して文句をぶつけてくる。
泣いて騒いで気分がすっきりしてくれるのなら、俺はそれで十分だった。
だが、ある言葉に対して俺はブチッとキレたのである。
「あんた!あたしの幸せを奪って楽しいの?男として最低よ!」
「誰が茜の幸せを奪ったんだよ!俺だって、仁藤から告白されるなんて思っていねーよ!」
「うるさい!どうせあんたが誘ったんでしょ!異性に興味がないくせに、同性を誘惑するなんて、男の風上にも置けないわ!バカ!一哉を返してよ!」
「ふざけんな!俺がいつ、同性を誘惑した!バッカじゃねえの?そんなくだらない考えをしているから、男に逃げられるんだろうが!」
口喧嘩はだんだんとヒートアップしてしまい、遂には母さんが出てきたのである。
この時、たまたま遊びに来ていた麻衣さんも母さんと一緒に出てきた。
「何しているの?二人とも。大声を出して・・・近所迷惑でしょ?」
「だって!優のバカが、あたしの彼氏を奪ったんだよ?」
「奪ってねーよ!」
母さんと麻衣さんがきょとんとした顔でお互いの顔を見合わせる。
状況を説明しないと、確実に判らないだろう。
だが、この時の俺達は頭に血が上っており、説明する気にもなれなかった。
「双子、とりあえず落ち着いて事情を話してくれない?そうじゃないと、うちらもどう対応すればいいのか判らないわ。」
麻衣さんが冷静な態度で俺達に対処してくれる。
第三者がいることは実にいいことだ。
だが、麻衣さんと母さんには関わらせたくないと思ったのか、茜がヒスをぶつけた。
「母さんたちは黙っててよ!これはあたしと優の問題なんだから!」
「黙っていられないでしょ?大声で騒がれて、近所から苦情が来たら、あんたが対処できるの?」
麻衣さんの一言で、茜が黙り込んだ。
さすがだ。
問題児ばかりを相手にする学校の先生の言葉は強い。
そこでようやく、俺も少しだけ気持ちを落ち着かせたのか、麻衣さんと母さんに事情を説明した。
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