第五章 ほのくらい過去

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さて、一行はまたすたすたと歩き出した。アザエルの三歩後ろを、ネフィリムは影を踏まないように歩いていく。 「ところで、王都はこっちじゃないですよね?」 質問してくるハルベルト。 「あの翼を持った男が、なんだか伝承に出てきた気がしてな。それを調べに図書館へ行く。」 表情を変えずにアザエルは言った。 しばらく歩き続けて、図書館に着いた。 「これを読むか………。」 アザエルは、エダロ記と書いてある本を読むことにした。 その昔、神は、7つの昼と夜をもって、宇宙を創造された。まず初めに、光を創られた。これが星である。次にあらゆる生き物を創り、最後に、自分に似せて人間を創った。 人間は神の創った楽園にある進化の結晶である知恵の実を食べ、楽園を追放された。 神は彼らを監視するため、天使の軍団であるグリゴリを向かわせた。しかし、グリゴリたちは人間に争いの元となる知識を与え、人間を妻に受けた。天使と人間の間に生まれたのは、ネフィリムと言う名の巨人たちだった。彼らは世界のあらゆる物を食らいつくし、ネフィリム同士の共食いまで発生した。神は大洪水を起こし、総てをやり直した。その時、世界中の虫たちに、人間を監視するように命じた。特に進化が原因で起こった事態なので、不完全変態であるゴキブリやバッタには、もしもの時は人間を皆殺しにするように命じた。ゴキブリやシロアリは、人類が破滅の道を歩く時、総ての文明を食らいつくす。その危機を、彼らは3億5千万年も見張っているのである。 エダロ記には、だいたいこんなことが書いてあった。 「ネフィリムって書いてあったが、心当たりあるか?」 「………いえ。」 アザエルに、不安そうな顔で答えるネフィリム。 「………そうか、行くぞ!」 「え!?何処へ?」 戸惑いを見せるハルベルト。 「だいたい分かった。どうやら、翼の男はグリゴリの生き残りかもしれん。探しに行くぞ。」 アザエルは王都に向かって歩き出した。
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