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アスタロスと名乗った男は、すぐに刀を構え、アザエルに近づいてきた。
「君は強いよ。弱き者の味方になり、権力に屈しないのだから………。」
アザエルを誉めているようだ。
「そんなたいしたことじゃない。子どもをいじめている大人気ない貴族様とやらを見ていられなかっただけだ。」
そんなことを言われている貴族の男は、すでに頭から湯気が上がらんばかりだ。
「このガキ!言わせておけば!お前ら!切り捨てろ!」
すると、一人の兵隊が襲いかかってきた。アザエルはそれをグレイブで防いだが、それをアスタロスは掴み、後ろ側へ勢いよく投げ飛ばした。
「子供の前だ、暴力は控えろ!」
アスタロスが言った。
「公爵様、ここは退くべきだと思われます。我が国の法律では、基本的人権の尊重を掲げています。これは一種の自由を奪うことになりうるかと………。」
一人の兵隊が言った。
「しかし………犯罪者を………」
公爵は自分の立場が無くなったような気がして、言葉に詰まっている。
「それなら心配いらんよ。俺たちが裁判所まで連れていく。それ相応の罰を受けることになる。」
アザエルが、さっきとはまったく違うことを言っていた。
「?………どういうことだね?」
アスタロスが聞き返す。
「安心してほしい。悪いようにはしない。さあ行こうか、お嬢ちゃん。」
「は………はい」
不安そうな表情で答える少女。
「ホントに大丈夫かな?」
ハルベルトが言った。
「何か考えがあるんでしょう。アザエルさんを信じましょう。」
ネフィリムが答える。
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