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「あ、傘がねぇし」
無論、放課後である。
昇降口で立ち尽くす、無惨な俺。
ふと、『俺、富士山。お前、無惨』というキャッチフレーズが頭を過ぎった。
由花のキャラが、すっかり伝染しているらしい。
そんなときだった。
「修じゃんっ。どうしたの?」
由花が現れた。
もういっそ逃げたい。
「別に」
「はぁぁあ…」と深くため息をついた。
すると、由花が嬉しそうに口を開いた。
「あっ、わかった!傘忘れたんだー!!」
「わりぃかよ」
クイズ番組じゃないんだから、「はい正解っ!ピポピポピポーン!」とはならない。
ふと由花を見ると、傘を差し出していた。
「じゃあ、しょうがないっ!お姉ちゃんが貸してあげようっ!!」
THIS IS ピンクッ!!
嬉しいけど嬉しくない。
「い…いや、いい。その傘使ってさっさと帰れ」
いつもそうだ。
俺は嘘つきで、嬉しくても「嫌だ」と言う。
こいつの前だと、自分が嫌いになる。
「じゃあさ…一緒に帰ろ?」
急に大人しくなった声で、由花は突然そう言った。
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