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中学二年生は、一般的に気楽な学年だと言われているけど、案外そうでもない。確かに、受験生じゃないし、先輩から目付けられるとかはもう気にしてない。が、十代というのは悩み多き年頃なのだ。勉強が上手くいかなくなった、部活で思うような成績が出ない、好きな子がいる、など。
俺もそんな内の一人。もっとも、前者二つではない。恋。そう、恋の悩みがあるのだ。
己己己己航(いえしきわたる)は、いわゆる一匹狼タイプの女子だった。他の馬鹿っぽい女子とは話さないし、いつも一人で本を読んでるような、暗い雰囲気を持っていた。
勿論俺は話したことすら無い。では何故俺が彼女を好きになったかというと、話は約8ヶ月前に遡る。
暖かい春の日差しに包まれ…ることなく、小雨の降る始業式は始まった。曇天と憂鬱に挟まれながら、俺はただ呆けた顔をしていたような気がする。
いつの間にか式は終わっていて、友達が必死にクラス変えについて話していた。どうやら俺は2組らしい。促されるまま掲示板を見ると、珍しい名前が目に飛び込んできた。
己己己己 航。どうやら「いえしき」と読むらしい。俺も春夏秋冬(ひととせ)という変わった名字なので、ちょっとした仲間意識を持ったのを覚えてる。
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