救う

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教室に着き、すぐ名前を見つけた俺は、何も考えずに、1人で座っている己己己己に声をかけた。 「変わった名字同士、男の友情を結ぼうぜ」 返事は無かった。そこでやっと気づいた。腰まで届く長い髪。俺を見る長い睫毛。丈の長いセーラー服。己己己己航は、女だったのだ。 時は流れ、木枯らしの吹く師走となり、もうすぐ冬休み。浮かれた生徒が騒ぎ、踊る下駄箱。俺は、 「放課後時間あります?」 と後ろから声を掛けられた。 思いもよらない相手から。 振り返ると、――己己己己航がそこにいた。こんなに近くで見たのは4月以来だ。 「一度家に帰ったら、近所の公園に来て下さい」 帰って鞄を玄関に置き、またすぐに家を出た。母親の呼びかけを無視し、あらゆる期待に胸を弾ませながら、約束の場所に向かって、息を切らして走った俺。 ブランコに腰掛け、先に来ていた彼女。俺に気がつくと挨拶も無しに言う。 「あのー、春夏秋冬さん、私を…殺して下さい」 「救済殺人制度」という法律が一年前に施行された。相手からの要望や、了承を取れば、人を殺しても罪とされない…といった内容だ。世間では賛否両論の声が上がり注目を集めたが、今は特に騒がれなくなった。 ただの中学生である俺には関係のない話、…だったのに………。
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