雨の日、出逢い。

19/50
前へ
/51ページ
次へ
「…だって、まだ2時前だよ?最低でも、あと3時間は待たないと…」 「待つ。」 …そう言われましても…。 困り果てた俺は考えるのをやめ、この子の言うとおりにする事にした。 「…ハァ。じゃあ、終わるまでどっかで時間潰してて?」 「…それじゃ、食堂に居るわ。」 「分かったよ。それと、君の名前を教えてもらってもいいかい?」 少女にそう言うと、 「私の名前…何に使うの?」と、不思議な事を聞いてきた。 俺は普通の質問をしたつもりだったんだけど、なんか、変だったかな? そう思い、少し違う言い方でその質問に答える。 「…君の事をどう読んだらいいか分からないから、名前を教えてくれないか?」 「……疾しい事に使ったり…」 「しない。」 「…変なあだ名は?」 「…それは名前によるかな」 「…エッチ。」 「どうしてそうなる。」 「クスクス…言ってみただけよ」 クスクスと妖しい笑みを浮かべる少女。その笑みに、少し魅せられた自分が居たが、その感情をかき消し、質問を続ける。 「…それで、君の名前は?」 「…メリー」 「メリー?」 「そうよ」と、軽くうなずく。 「じゃあ、メリーちゃん。講義終わったらすぐ行くから、食堂に居てね?」 「クス…分かったわ」 そう言って少女は俺に背を向けて食堂の方に歩き出した。 「―…いやぁ、急に教室出てくんだもんなー、ビックリしたわw」 「いや、俺もビックリしたんだよ。急に、腕掴まれて拉致られたんだからさ」 「でも、ちゃんと次の講義には出れたし良いんじゃね?w」 「まぁ…。」 でも、まだ問題は解決したわけじゃないんだよなぁ…。 なんて思いながら、もうすでに、半分埋まっている教室を眺めていた。 それから、あっという間に今日の講義は全て終了し、約束の時間がきた。 俺は、多分待っているであろう少女を迎えに行こうとしていた。 「ようやく終わった…さて、帰りますか、とはいかないんだよな。」 はぁ…なんでこんな事になってんだよ…。 「てか、あの子ホントに食堂に居んの?」 「何、ブツブツ言ってんだ?お前」 「…お前にゃ分かんねえ悩みだよ、シン…」 「ふーん」 と、鼻を鳴らすシン。 それから、自分の荷物を持ち、「んじゃ、先に帰ってるわ。」とだけ言い残し、教室から去っていく。 …俺も、早く迎えに行こう。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1394人が本棚に入れています
本棚に追加