雨の日、出逢い。

20/50
前へ
/51ページ
次へ
「…食堂にいるって言ってたろ、あの子…。」 荷物をまとめ、急いで食堂に向かったのだが、実際着いてみると、少女の姿はなかった。 辺りを捜しまわったが、当然、少女の姿は見当たらなかった。 「…居ないんだったら、もう帰ろうかな……。」 そう思いながら歩いていると、どこからか聞いた事のある笑い声が聞こえてきた。 「…クスクス……」 「…メリーちゃん?」 笑い声は聞こえるが、姿は見当たらない。 「…クスクス……こっちよ、ヤマザキノボル…」 「…あ、居た。」 声がする方に行ってみると、そこには、夕日をバックに、何故か右手にトウモロコシを持って木の上に登っていたのだった。 「…なに、してるの?」 恐る恐る聞いてみる。 「やっと終わったようね」 あ、スル―ですか。 「…ああ、終わったよ。」 「そう…。」 「ああ。だから、そこから降りてきてくれないか?」 「…ええ、そうしたいわ。」 「…うん、そうしてくれ。」 「……」 「……?どうしたの?」 「…お、降ろして…」 「……は?」 少女はもう一度だけ、「早く…」と、今にも泣きそうな声を出しながら懇願してきた。 「…マジで言ってんの?」 「ま、マジよ…だから早く降ろしなさいよ……」 声がさっきよりも震えてきている。 「…ハァ、なら受け止めてあげるから、そこから飛び降りな?」 「……こ、怖い…」 あ、足が震えてるw 「…しゃーないなぁ…そこから動くなよ?」 「わ、分かった…」 もう、人を小馬鹿にしたような笑いをする余裕もなくなり、今にも泣き出しそうな顔で俺の助けを求めている。 お前は木に登って降りられなくなった子猫か。 少し微笑ましいな、なんて思いながらも急いで子猫…もとい。メリーちゃんを降ろしにかかったのだった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1394人が本棚に入れています
本棚に追加