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「…食堂にいるって言ってたろ、あの子…。」
荷物をまとめ、急いで食堂に向かったのだが、実際着いてみると、少女の姿はなかった。
辺りを捜しまわったが、当然、少女の姿は見当たらなかった。
「…居ないんだったら、もう帰ろうかな……。」
そう思いながら歩いていると、どこからか聞いた事のある笑い声が聞こえてきた。
「…クスクス……」
「…メリーちゃん?」
笑い声は聞こえるが、姿は見当たらない。
「…クスクス……こっちよ、ヤマザキノボル…」
「…あ、居た。」
声がする方に行ってみると、そこには、夕日をバックに、何故か右手にトウモロコシを持って木の上に登っていたのだった。
「…なに、してるの?」
恐る恐る聞いてみる。
「やっと終わったようね」
あ、スル―ですか。
「…ああ、終わったよ。」
「そう…。」
「ああ。だから、そこから降りてきてくれないか?」
「…ええ、そうしたいわ。」
「…うん、そうしてくれ。」
「……」
「……?どうしたの?」
「…お、降ろして…」
「……は?」
少女はもう一度だけ、「早く…」と、今にも泣きそうな声を出しながら懇願してきた。
「…マジで言ってんの?」
「ま、マジよ…だから早く降ろしなさいよ……」
声がさっきよりも震えてきている。
「…ハァ、なら受け止めてあげるから、そこから飛び降りな?」
「……こ、怖い…」
あ、足が震えてるw
「…しゃーないなぁ…そこから動くなよ?」
「わ、分かった…」
もう、人を小馬鹿にしたような笑いをする余裕もなくなり、今にも泣き出しそうな顔で俺の助けを求めている。
お前は木に登って降りられなくなった子猫か。
少し微笑ましいな、なんて思いながらも急いで子猫…もとい。メリーちゃんを降ろしにかかったのだった。
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