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「…早く降ろして。」
「あ、ごめん」
彼女を降ろそうとしゃがむと、彼女は俺の背中からふわりと地面に降りた。
てか、ホントに背負ってたって感覚がなかったな…。
なんて考えていると、
「クスクス……まだ背負っていたかった?」
「…んな訳あるかッ!」
「クスクス…どうだか。さっきまで、あんなに物欲しそうに私を見ていたくせに…クスクス…」
この、ク ソ ガ キ が !!!!
「…とりあえず、上着だっけ?探すから、何色だったかとか教えてくれる?」
「クスクス…」
「…おーい、聞いてるかい?」
そう聞きながら少女の方に振り返る。
「…あれ?」
振り返った時には彼女の姿はなかった。
「…家に用があったんじゃないのかよ……」
怒りと呆れが混ざった、何とも言えない感情が湧き上がってきたが、どこにぶつける訳にもいかず、ただただ、空を見上げてため息を吐くしかなかったのであった。
「…ただいま」
今日は昨日よりも疲れた…。
がっくりと肩を落としながら部屋の奥へと進んでいく。
すると、今朝出ていく時に棚の上に置いたはずの人形が、目の前にちょこんと座って、まるで俺の帰りを迎えてくれているかのように置いてあった。
「あれ…?今朝、こんなところに置いてないぞ…?」
急に寒気がした。
「……この人形…やっぱり……」
俺は、持っていたカバンをベッドの方に投げ捨て、乱暴に人形を持ち上げ、玄関を飛び出した。
とにかく、この人形をどこか遠くに捨てなければ…。
そう強く感じた俺は、出来るだけ…出来るだけ遠くに捨てに行った。
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