350人が本棚に入れています
本棚に追加
「羅生門」は境界を越えた瞬間
の人間のうしろ姿を切り取った物
語だと思う。芥川龍之介が描いた
のは、飢え死にするべきかどうか
や、善悪の区別、人間の理想とい
うだけでなく、人の生死という現
実なのだと思う。最初の頃の下人
は主人に暇を出され、途方に暮れ
て、明日の暮らしをどうするかを
考えていた。しかし、生きるため
には盗人になるしかないとわかっ
ていても、決心をつけられずにい
た。つまり「悪の世界に」飛び込
めずにいたのだ。そのとき、老婆
と出会い、彼女の「生きるために
は悪いことをしても許される。」
という言葉を聞き下人の心には、
ある決心がつく。それは、正義心
ではなく、その正反対である、悪
になることだった。僕はこの物語
を通して、生と死の境界にたった
人間の気持ちの変化を目の前で見
たように思い、また、その下人の
考えは自分にとって、とても悲し
いものだった。しかし、下人の立
場にもし自分がなっても同じよう
にしたと思う。それほど、人間の
心理は普段とは別の次元を体験し
たときに、とてももろいのだと感
じた。
最初のコメントを投稿しよう!