プロローグ

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 ――― 男は足元に倒れている女を見た。 どうやら息の根を止める事が出来たようだ。  ふぅっ、と一息ついた時、後ろの方で物音が聞こえた気がした。 “誰だ…!” と声をあげそうになり、慌てて口を塞ぐ。自分の正体を明かす真似をしてはならない。 ――― 見られていた? 誰かいたのか…?  男は鼓動が速くなるのを感じた。 ――― こんな時間に、こんな所に、誰もいるはずがない。 …そう言い聞かせつつ、ゆっくりと廃ビルの所までやって来た。  壁の向こうを素早く覗き込んだが、誰もいなかった。廃ビルの中も確認したが、猫の子一匹見当たらない。
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