に。

5/5
前へ
/20ページ
次へ
屋上にいた。生まれて初めてのさぼりをするために。 でも、そこには先客。 赤茶の髪に、整った容姿。同じクラスで、めったに来ない、長谷部。下の名前は忘れた。 「…こいつ、何してんだ。」 俺は半分立ち尽くしたように、寝転がっている長谷部を見つめていた。 どうやら寝ているらしく、俺の疑問には答えてもらえなかった。 ふと、思う。こいつをちゃんと見るのは初めてだ、と。 校内にはファンクラブのようなものもあると聞くし、かっこいいんだろうとは思っていたけれど…ちょっと、驚いた。かっこよすぎたから。 鼻は高いし肌は綺麗だし睫毛は長いし。見ていて、飽きない。 「…ん、……」 俺が見すぎていたからだろうか、長谷部は少し身動ぎした。起こしてしまうかもしれない。俺は静かにその場を離れた。 その日から、学校生活が少しだけ楽しみになった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加