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君の故郷にも一つや二つ、語り継がれる怪談があるだろう?
真夜中に呻き声が木霊する『廃虚の病院』
女の幽霊が出没する『逢魔のトンネル』
旧校舎の片隅に眠る『開かずのトイレ』
兵隊の亡霊が現れる『闇の防空壕』
小学生の頃。
不気味で。怖くて。不可思議で。何だかわくわくして。未知との遭遇に鼓動が熱く高まったものだ。
無垢な僕らは放課後になると、うわさ話に夢中になれた。
この物語は、そんなありふれた寓話に過ぎない。
その洞穴は、老朽化した団地の裏山にひっそりと眠っていた。
洞穴と呼ぶには小さすぎる。小型犬が身を屈めて、どうにか通り抜けられる程の穴。
荒れた斜面は腰の高さまで夏草が生い茂って、その存在を誰も知らない。
緑色のカーテンをかき分けて、その深い闇の底を覗いてごらん。
足下に潜む毒蛇に咬まれないで。
飛び立つバッタに驚かないで。
じめじめと湿って、ひんやりとした風を肌に感じるだろう?
ほら、耳を澄ませてごらん。
何やら微かな囁きが聞こえるだろう?
現実(リアル)の傍らに、未知なる異世界への入り口が息づいているんだ。
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