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「をれ、こにょあな、でぇたい…。」
童鬼は横笛を静かに置いた。愛くるしい瞳から大粒の滴がぽた、ぽた、と溢れ落ちていく。
「童(わらべ)よ…。外の世界は危険すぎる。お前の父も弓矢に射られて死んだではないか。」
宗之介は静かな声音で諭す。
「でぇたい!でぇたい!」
童鬼は地べたに転がり、か細い手足をばたつかせて、更に泣き喚く。
困惑した宗之介は尻尾を丸めると、垢で汚れた頬を小さな舌で舐めた。
「物の怪と人間は相容れぬ。異形の姿を見たなら、おののいた奴等は無惨にお前を殺すだろう。
いいか…童。我等は闇に暮らし、闇に生きるが運命。掟は守らねばならぬ。」
童鬼は頬を赤らめてそっぽを向く。百年以上も生きているが、魂は幼子のままなのだ。
「やれ、やれ…。」
我が侭な所は父親の『閃鬼』ゆずりか…。
世話をやかせる孫だ。
しかし、好戦的な一族の末裔でありながら、無邪気で純粋な魂を宿す童鬼が愛おしくてたまらない。
『こやつを人間共の餌食にさせてはならぬ。』
泣き疲れて眠った孫を小さな躰で庇う様に、宗之介は身を丸めて紅眼を閉じた。
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