第三章・―別れ―

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 そんなマリアを慈しむように優しい手付きで、残酷な程に哀しげな、だが柔らかな表情でオフィーリアは、瞳から溢れた血の涙を拭っているのだ。  そして、そうする内にも、もう片方の手で“アラストル”の切っ先を彼女の柔らかそうな腹に向ける。 「……っ、駄目だ! フィー!!」  シャークの声が虚しく署内に響く。 「あがっ……」  しかし無情にも、無表情のまま勢いよく突き刺したオフィーリアの頬に、マリアが吐き出した鮮血が付着する。 「これで、仕舞いや」  “アラストル”を腹から抜いてもう一度、またも躊躇う事なく、今度は心臓目がけ、的確且つ容赦なく突き刺した。 「……ごふっ」  びくりと身体を震わせたマリアが力なく細い手を差し伸べようとして、だがそれは叶わずに宙を掻き、力を失ってゆっくりと地面へと堕ちた。  そんなマリアの傍にしゃがみ込み、ひらいたままの瞳をとじさせる。  それから彼女の上半身を起こすと、微かに微笑んでいるようにも見える柔らかい唇に最期のキスを落とした。  マリアの左手薬指にはめられたシルバーリングを愛しむように、自身の手指を絡めながらーー。
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