―Prologue―

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 また同じ夢を見るのはうんざりではあるが、睡眠不足で他の署員の足を引っ張る訳にもいかない。  シュバリエの策略により、名目上の左遷を喰らったアンダーテイカーのために、今はヴァイス署を護らなければいけない。  ーー俗に吸血鬼と呼ばれる生き物、“昏きもの”であるオフィーリアの場合は、少しばかり他の同じ一族と考え方や生き方が異なる。  吸血鬼と言えばすぐに思い起こされるのは、人間、特に美女の鮮血を啜り。  その人間を自らの眷属へと貶め、十字架やこの世のあらゆる聖なるものを嫌い、太陽の光やにんにく、流れる川を嫌う、そんなどこかの物語で聞くような者達だろう。  だが、実際は違っている。  彼らは微塵も十字架を恐れないし、太陽の光やにんにく、流れる川や聖書から紡がれる聖句ですら脅威ではないのだ。  その点で、彼ら“昏きもの”は物語や神話の世界で語られる吸血鬼とは、大いに存在を異ならせている。
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