―Prologue―

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 ーー辺り一面緑が茂る丘の上で、蒼い髪の少年は泣いていた。  血溜まりの中心に座り込み、衣服が液体を吸収して赤く染められていくのも構わずにいるのだ。  そうしながらも、血に染まった両手で流れる涙を拭うと赤いそれが滲み、余計にまだ綺麗だった顔を穢してしまう。  むせ返る、吐き気をもよおす鉄臭い匂いには慣れているのか、何が悲しいのか少年はただ泣いていた。  彼自身が怪我をした訳ではない、たが血を流した対象はもうそこにはいない。  彼がたった今、容赦なく手にかけたのは同族、つまり“蒼”の“昏(くら)きもの”達だった。  “昏きもの”とは、いわゆる吸血鬼の総称である。  その彼が何故、同じ一族を殺さなければいけないのか、それは死んでいった彼らが一族を裏切った、掟を破った“昏きもの”であるからだ。  “蒼”の一族が総じて掲げる掟とは、“人間は、護る者”である。
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