第一話・―虚像の中の真実―

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 部長とは、ジョシュア=ブラックホークの事で、優秀ではあるが個性派揃いのヴァイス署陰契課の面々を、半ば力業でまとめるダンディである。  後ろにねめつけた髪形とサングラス、厳つい身体つきがいかにも厳格な雰囲気を醸し出す、豪快な性格の持ち主だ。  部長室の厳か且つ非常に重くちょっと躊躇うドアをノックして入った先で、敬礼をして言葉を待っているオフィーリアもさすがに焦れてきた。  それなのに高級そうな革張りの椅子に落ち着くジョシュアは、磨き抜かれたデスクに肩肘をつくと、咎めるように片眉を上げた。 「……コーラルブルー、貴様には質問したかった事がある」 「何ですか?」  内容を痛い程理解しているのか、敬礼する手を下ろしたオフィーリアの表情も鋭く、ジョシュアに挑むようなものとなっている。 「……貴様、何故グレン殿まで説得した」  ジョシュアは微塵も殺気に怯まず、態勢を変えて腕組みすると、それすら圧倒しかねない雰囲気をまとった。
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