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「……」
オフィーリアが質問に無言を貫くと、それを単なる拒否の姿勢だとみなしたのか、乱暴にデスクに手をついたジョシュアが立ち上がる。
「貴様はエディの一件で、グレン殿に許しを請うために、イレブンジーズ家にも行った筈だ」
それからわざとらしく靴音を立て、彼の横で立ち止まったジョシュアは、続け様に視線だけで何人か殺せそうな迫力で睨む。
「シュバリエの事前報告があったとはいえ、グレン殿を説得するのは貴様にとって命懸けの行為だった筈だ」
ジョシュアは一族の掟を破り、同族殺しの過去すらあるのに、未だ“蒼”の一族から処刑もされず、のうのうと生きているように見えるオフィーリアを、まるで汚物でも扱うかのように忌み嫌っている。
一時期など、誰も処刑しなければ自身の手を汚すとまで言い放ち、“蒼”の前長であるウォルフリィ、そして前々長であるグランパの二人から、直接激しい説教を喰らった事すらある程なのだ。
そんな相手の前に立つなど、まさに命懸けの所業に他ならない筈なのだが……。
「……それが、どないかしました?」
そこまで言われて口をひらいたオフィーリアは、ある意味開き直りの態度を見せるとゆっくりと肩をすくめるだけで反論を終える。
「そうまでして、一体貴様は、エディの何を“護り”たかった?」
ジョシュアが問うのに、自嘲めいた笑みを浮かべたオフィーリアは、無言で首を横に振った。
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