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否、もしかするといつの間にか笑いたくても笑えなくなっていたのか、それは少年自身にも理解らなかった。
「……君」
血に染まっていく少年を、少し遠くから呼びかける声があった。
幼くあどけない声を聞き、泣いていた少年がゆっくりと顔を上げる。
「オフィーリア君、オフィーリア君……。どうしたの?」
見ると目の前には少年と同じ歳くらいの、蒼い髪の男の子が立っていた。
履いている靴が血に塗れるのも気にならない様子で、男の子はぴちゃぴちゃと音を鳴らしながら少年へと近付いてくるのだ。
「また泣いてる。どこか怪我をしたのかな?」
心配そうに覗き込む男の子に、少年……オフィーリアはふいとそっぽを向いた。
「……俺とおったら、大人に怒られるで」
涙を拭い、余計血に染まった表情には、少年らしからぬ大人びた雰囲気さえ滲んでいる。
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