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「うん」
男の子はそんな言葉に満面の笑みで頷いたくせに、傍に座り込むとその場から動かなくなる。
「……服、汚れるし」
「うん」
オフィーリアが呆れた声音で忠告するのに、男の子は頷きはするものの、やはり動く気はないようだった。
「……何か用?」
「うん」
とうとう折れたオフィーリアが問いかけると、男の子は嬉しそうに三度頷いた。
それから懐に手をやると、中から綺麗なレース地の紙に包まれた物を取り出して勢い良く差し出す。
「あのね。リズ伯父さんがね。おやつくれてね。“沢山あるから、誰かと分け合って食べなさい”って」
「……要らんし」
状況を理解していないのか、こんな血溜まりの中で呑気におやつを食べる子供の話などついぞ聞いた事がない。
すっかり気分も落ち着いたため、のろのろと立ち上がると、男の子を置いて行こうとする。
刹那、その腕を掴んだ男の子が言った。
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