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――目が覚めた視界の先は、まだ暗い部屋の天井だった。
無意識に伸ばしていた手は何も掴めず宙を掻き、そこまで気付いたオフィーリアは静かにため息を吐く。
夢を、見ていたのだ。
もう何度となく見た夢を……。
「……阿呆らし」
自分の気持ちを誤魔化すためなのか、そう呟くと左目に手を当てる。
微かに濡れた跡、頬を伝うものは彼が流した涙に他ならない。
オフィーリアが夢を見る時は、いつも決まってそうだった。
何を掴むつもりだったのか、いつもへらへらと馬鹿面をさらして笑う従兄弟の腕を……?
そんな風に自問自答して、すぐに打ち消す。
さして広くもないアパートの一室で、何故か焦燥に駆られる思いで気配を探ってみる。
だが、少し前まで居座っていたシュバリエの気配も、クーリッシュの気配ももうここにはない。
シュバリエは散々ヴァイス署を引っ掻き回した挙げ句、あっけらかんとした表情で、“向こうに客人を待たせているから”と言って、至極あっさりとウォーターブルに帰ってしまった。
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