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あれから、笑華はよく僕の所へ来てくれるようになった。
その度、ベッドの端に腰掛け、今日の出来事を話してくれた。たまに駄菓子を沢山持って来て、ゴミ箱をそのカスでいっぱいにした。
その瞬間は僕の人生の中できっと、もっとも充実していて、もっとも時の経過が早かった。
だって、今日が気づけば昨日で、明日はすでに今日だったから。
「……うん。最近すごく経過が良いから、明日は外出を許可しよう。けれど、無茶は禁物だからね。午後4時までには必ず帰ること。薬も持っていくんだよ」
目の前の先生は矢継ぎ早に言葉を紡ぐと、ヤニで少し黄色くなった歯を見せて笑った。
「はい。ありがとうございます、先生」
「うん。楽しんでおいで」
らしくないような返事をしたものだから、急に恥ずかしくなって俯いた僕の頭を大きな手が撫でた。
温かかった。
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