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病室に帰ると、笑華がもう来ていた。心配そうな目で僕を見る。 「許可、もらえたよ」 前に言っていた駅前のプリンを食べにいく計画。実現は叶わないだろうと心の隅では感じていたが、最近体の調子が良くて聞いてみれば先ほどの通り。案外容易く了承が貰えたと言うわけだ。 許可が嬉しいことには変わりないのだけれど、心なしか弾んでしまった声が、何だかずいぶんと僕だけが楽しみにしてしまっているようで。もしかしたら、舞い上がっているのは僕だけかもしれない。 いや、実際すごく楽しみなんだけれど……。 それに加えて、待っていてくれた、という喜びと何だかうまく表現できない気恥ずかしさに、僕は思わず俯いてしまった。 「やったぁ!!泉!楽しみだねぇ!プリンだけじゃなくて、他のところも行きたいね!」 しかし、どうやら僕の先ほどのウダウダしたものは杞憂に終わったようだ。 個室だとは言え、病院内で嬉しそうに飛び跳ねたり、駆け回ったりする笑華を見て、そう思った。 彼女も、僕と出かけることをこんなに楽しみにしてくれていたんだ。 最近よく感じる、心の隅々までじんわりとしたものが広がってゆく感覚を覚えるのと共鳴するように、僕の頬が思わず綻んだ。  
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