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「…もう、長くありません。長くて1年、短くて半年…」 ドラマのような暗い病室。泣いてくれる人もいない先生と2人だけの空間で僕、羽山泉(ハヤマイズミ)は絶望を貰った。 「…そう、ですか…」 手にぐっと力を入れて拳を握り締めるとギリリと音を立てた。 力をふっと抜きその手のひらを見ると僅かに真っ赤な鮮血が流れていた。 脆いくせに 傷はできるのかよ。 僕のズタズタの心は毒を吐く事位しか出来なくなっていた。 「……羽山君、気を落とさずに。進行を遅らせる薬もある。それに何より、しっかり今を生きていかなきゃ!」 医師は気を使ってか僕に声をかけた。 要らないのに…そんな優しさ。それなら僕に命をちょうだい。無理なら、今すぐに死をちょうだい。じわりじわりと進行する病気なんて嫌だ。怖いんだ。 気を使ってくれたのも解ってたけどそれに笑ってお礼が言えるほど僕は余裕を持ち合わせてはいなかった。 それにそこまで、大人でもなかった。 だって、あんたには分からないじゃないか。 こんなチンケな命だけど、半年しかもう自分を刻んではくれない僕の未来を。 静かに診察室を出て自分の病室に戻った。周りよりも少し豪華な個室は僕の両親が用意したから。 でも僕は相部屋でも良かった。会いに来れないくらい働くなら働いてくれなくても良いのに。 絶望の局面にたたされた僕は独り悲しく鉛色の空を見上げた。  
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