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とっさに僕はその手を掴んだ。
「何?」
「あ……ううん、ごめんただ羽山君凄い綺麗だなって思ったら手が勝手に動いちゃった。……迷惑だったよね、ごめん」
長い睫がほんのり色づいた頬に影を作った。
先ほどとは違うあまりにも落胆した様子に僕は慌てて弁解する。
「あ、いや……違うんだ。
突然だったから、つい……
ごめんね?痛かった?」
今まで掴んでいた手の力を緩めるとそれがおれそうな程細いことに気が付いた。
骨の筋が浮き出て目立っているし手首の骨はくっきりとそこが自分だけの場所だ、と自己主張するように骨骨しい。
だけれどその腕は温かくて心地よかった。
だからなんだ、僕がこんなにも必死で弁解するのは。
「……大丈夫だよ。こちらこそごめんね、急にだったから驚いたんだよね?私ね、花実笑華!おはなの花に、パイの実の実に、笑点の笑みに、中華料理の華だよ!」
僕は彼女の自己紹介につっこむべきなのか一瞬だけ思案してしまった。
とりあえず笑点の笑は「えみ」とは読まないからね。
それはまず置いといて彼女は格段怒った様子もなく笑ってくれた事に安心した。
「あぁ、よろしく。
僕は羽山泉」
ぎこちなく僕も自己紹介すると知ってるよ!と彼女は大きく微笑んだ。
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