#3出現

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「まあ、最後のはないな――週刊誌の見出しで勉強しているのか?」平岡は木下の話を否定し、言いつないだ。 「あっち(アメリカ)では、バイアウト(買収)は企業再生という認識が強い――美生社は、これまでに経営再建に失敗しているんだ。その株を買ったからと言って、儲かる話ではなかろう。ゴールドサン・ジェインは、単に企業再生を狙っているだけかも」  木下がうんざりした顔つきに変えた。子どもじみた平岡の妬みを、これまで薄々感じていたが、ここまで言いきられると、自分の無知さにほとほと呆れるだけだった。 「そうですね、そうです。ボスのおっしゃる通り――ですが、これだけいろんな噂が出るには、美生社が沈黙を貫いているから……そう思います」 「ああ……そうだな」五十嵐はちらっと木下を見上げた。 「ありがとう。もう業務に戻ってくれてかまわないよ――明日から出張だろ? くれぐれも、気を引き締めて。業界は、今回の美生社の一件で、動揺しているんだ。足をすくわれかねないからな」
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