#1夢枕

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「……て」遠くから、彼女の声が聞こえる気がする。 「ううん」  五十嵐は、夢うつつで自宅の寝室で薄明かりのなか、うめき声をもらした。 「……起きて、映」  懐かしい声が耳介をくすぐる。少しかすれた、温もりのある、この声は――  そう思って、五十嵐が瞼を開けると、彼女の顔の輪郭がぼんやりと目に飛び込んできた。 「ステファニー……?」  彼は上の空で呟き、これが現実ではないと知りつつも、夢のなかで過ごしていたいと思った。いや、確実に、彼は夢を見ていた。十年前からパタリと見なくなった状況を、ステファニーが幻想であるにも関わらず、彼はそれにあらがえなかった。
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