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だが、なんとなく、味覚の具合がいつもと違っていた。ひどくはないものの、少しずつしか口へ運べないほど、胃のなかが気持悪かった。これは、妊娠したせいか、はたまた物思いにふけっているせいか……。
「そうだ」
何かを思い出したように、デイヴィッドは、眼鏡の奥にある、濃いまつ毛に縁取られた瞳をしばたたいた。
「〝ヤマモト〟にも行こうよ」
ブロードウェイにある、焼き鳥屋の名を聞いて、我に返ったように、三夜子が微笑をこめて頷く――。
「ええ、そうね」
同時に、初めてそこを訪れたクリスマスの夜、五十嵐から家族について色々聞いたのを思い出した。
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