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まさかミチが実母だとは、想像すらしなかった。〝ヤマモト〟で、その事実を知っていたら、いま頃どのようになっていただろう……。すんなり事が運び、すでに結婚しているかもしれない。深まっていく家族の絆。幸せな家族の情景。しかし、去年の年の瀬にそれが、結納という場で叶ったのだ。結納が終わり、いがみあっていた五十嵐とミチが、見違えるように仲むつまじくなっていた。
しかし――いま。二人を引き裂きそうな気がしてならなかった。
タイミングが悪かった。
ほんの少し、結婚が早ければ、こんなにも悩まずにすむだろう。三夜子は、ぼんやりと窓の向こうを見つめた。雪はしだいに強さを増し、窓の縁にかけられた赤や黄の電飾が幻想的に光っている。そこから目が離せずに――どこか夢見がちに――、三夜子は右手を白黒ボーダーのワンピースの上から下腹部をそっと触れた。今夜は寒さが厳しく、デニムレギンスにキャメル色のムートンブーツを履いている。
ブーツのかかとが、わずかに脚の長い椅子の足掛けにかかり、放心したように足がぎこちなくぶらついている。
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