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「君たち二人を残して帰れないな、こりゃあ。あぶないところだった」
デイヴィッドが笑って言ったのに気づいて、三夜子はぼんやりとセシルを見た。
「そうだね……」
セシルのくすんだ金髪がテーブルの上で散らばり、彼女は時々しゃっくりを起こしている。それを見て、三夜子は口を開く。
「セシルを送るだけの力がないかも、〝いまは〟」
うっかり口走ったのを、デイヴィッドは聞きのがさなかった。
「いまは……?」きょとんとしてたずねた。
「おかしな言い回しだね」
「えっ、そうかな!?」とっさに三夜子は背筋を伸ばした。
「ああ、いまも窓の外を眺めがらため息をついていたし、魂がぬかれたみたいだったよ」
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