#2いつもと違う、タコスの味

9/29

219人が本棚に入れています
本棚に追加
/1639ページ
「君たち二人を残して帰れないな、こりゃあ。あぶないところだった」  デイヴィッドが笑って言ったのに気づいて、三夜子はぼんやりとセシルを見た。 「そうだね……」  セシルのくすんだ金髪がテーブルの上で散らばり、彼女は時々しゃっくりを起こしている。それを見て、三夜子は口を開く。 「セシルを送るだけの力がないかも、〝いまは〟」  うっかり口走ったのを、デイヴィッドは聞きのがさなかった。 「いまは……?」きょとんとしてたずねた。 「おかしな言い回しだね」 「えっ、そうかな!?」とっさに三夜子は背筋を伸ばした。 「ああ、いまも窓の外を眺めがらため息をついていたし、魂がぬかれたみたいだったよ」
/1639ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219人が本棚に入れています
本棚に追加