#2いつもと違う、タコスの味

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 地域紙面とはいえ、記者という仕事柄からくる彼の洞察力は並外れているらしい。 「それに、アルコールが飲める年頃なのに、アルコールフリー(ノンアルコール)の〝射手座のカクテル〟ばかり飲んでた」  そう言ってデイヴィッドは、キウイジュースが半分残ったグラスに目をやった。 「もしかして」彼は、三夜子の下腹部に置かれた彼女の右手をちらっと見た。  その視線を三夜子は目で追い、「もしかして……?」と、半ば緊張した面持ちでたずね返した。 「なあに……?」 「子どもが出来た?」明るい調子で、デイヴィッドが言った。  いきなり正解を当てられ、三夜子は瞬時に右手を腹からはなした。 「ど、ど、ど」  デイヴィッドの瞳を凝視したまま言った。 「どうして!?」声が上擦る。
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