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「そんなっ、わたし、何も言ってないのに」
彼女の一言で、デイヴィッドは目を丸くした。
「半分冗談のつもりだったんだけど……その言い方って、まさか」顔一面に真剣みをおびる。
「本当に?」
三夜子はデイヴィッドから目をそむけられなかった。
「……ミヨ?」デイヴィッドが顔の前で手を振った。
「大丈夫?」
「あっああ、うん」目をひんむいたまま三夜子は恐々と椅子に座り直した。
「大丈夫……」
「ご両親は知ってるの?」デイヴィッドは、眠り込んだセシルを気にしながら三夜子にささやいた。
「えっ」三夜子は彼を見た。
一番最初に伝えるのが、五十嵐でも両親でもなく、デイヴィッドだと知って、緊張のあまりおののいてしまう。
「それが……」言いづらそうに、三夜子は口を一度つぐんだ。
そこから心の葛藤が見て取れるように、閉じた唇がせわしく動く。
「今日わかって」やがて三夜子が言った。
「今日っていうか、さっき家を出る前にわかって」
「診察受けたの?」デイヴィッドの顔には、笑みすらなかった。
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