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「ううん」三夜子は首を振って言った。
「それが、妊娠検査薬で……ほら、マリオさんの薬局で買うと、近所にバレちゃいそうだから、仕事帰りに買ってね」
心配させまいと、陽気に言ったが――
「そんなことは、どうだっていいよ。結果は?」すぐにデイヴィッドが訊いてきた。
一瞬、三夜子の顔が曇る。
「それが」三夜子はゆっくり言った。
「ポジティブ(陽性)だった」
「病院行かなきゃだめだよ。こんなところへ、来ている場合じゃない」
「うん……でも」平静を装うとした。
「久しぶりだから……それに、二人が祝ってくれるんだもん。来なきゃでしょ?」
笑顔を見せたが、一方デイヴィッドは真顔をくずさなかった。
「――彼は?」一段と低い声で言った。
「五十嵐さんは、知ってるの?」
三夜子は、切なげに顔をゆがませてから、左右に頭を振った。
「言えない」
「どうしてっ」デイヴィッドは、身振りを大きくし、さえぎるように言った。
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