「スカイ」にて。

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僕らは額やまぶたに 透明な道筋を描きながら、 艶やかな黒い布の雨を飛ぶ… 傘をはらませ 時々 地上に 着水する 電柱や 看板や 人々の傘に 軽やかに降り立ち、 再び飛躍する。 僕らは 互いに 意見交換するでもなく、 どちらが先をゆくでもない飛行を 雨音に紛れて行った。 僕らは交互に屋上や 柵に 降り立っては ジャンプする… 二つのアーチは飛距離を伸ばし 高さを増していく。 僕らの視線は どこまでも並列し、 まっすぐ続く… そこには 無心の共有があり、 交わらずとも 交換されていた。 二本のレールの上を 思念という電車が走るように 語らずも、語られていた…。 プロペラは 尚も くるくる回り 髪は 濡れながらも 夜風になびき、 この 予期せぬ空中散歩を 楽しんでさえいた 。 人々には見えていない 人が 幾つもの段階に分かれた事態を 認識するには 時間が懸かる。 水中に潜るまで 魚群を 目にできないように 人々も、空中へのぼるまで 僕らには 気づかない…。 何かにつけ 僕ら双子は、 そういう 違う断層を歩き、 人々と違う時間軸へ移行するのが 好ましい性質なのだ。  
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