「窓」にて。

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前を見ると 同じように 表情が うつろに輝く体躯が ペイジをめくっている… 小さな頭の形 、鼻筋… きっと 伏せた睫も 僕に 瓜二つ なんだろう。 青白く発光したシャツから 細い腕がのび、 グラスを包むように 本を 包み込んでいる。 僕は 自分の指を 確かめる 爪のたたずまいから 瓜二つだ。 華奢な骨格が 白い帆を ひと時 納め、 椅子に休んでいる… 彼方の入り口から見たら ふたつの白い帆が 波を離れ、 黒い深緑を背景に 静止しているように 見えるかも知れない 双子とは 対になるとは そういうものだ。 互いが 互いを映しあい、 拡張し、集約し 、 深め、 漂い… そして ひとつの 巨大な窓に収まっては 、 同じ疲れで まつげを垂らす。 眉毛と 額を向かい合わせ 指を 互いに黙認し、 互いの存在を 黙殺する… もしくは 互いを 静寂の鏡に 送り、流す… 見えなくなるまで…。  
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