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ふと 雨足が量を増し、
ガラス越しに 涼やかな音色が
耳に寄り添う…
この、喩えようもない浸水に
僕は 生かされている。
巨大な憂鬱から
汲み上げられてくる 水を
両手に掬い、のどを潤す
そして毎日、水のような時間を
水のような加減で 生きる。
そこには ただ、
流れるものがあり 、
草木を繁らせるものがある
情熱や 欲望は ただ
僕の眼を曇らせては、
白く靡く帆を 焼く…
僕は たちまち風を失い、
炎揺らめく帆を 千切りながら
海原で 漂流してしまうだろう。
ある種の人々にとって
莫大な憂鬱 とは、
生涯 使い切れない莫大な遺産と
等しいものだ
誇張も 見栄もない 切実なもの…。
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