「窓」にて。

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外界の 雨はしゃぐ音は 少しづつ 僕の体内にも 染み渡るような、 とても 心地よい気持ちになる。 雨足は カーテンを引き、 雑念や 雑音を 遮断してくれる いま、この街には 幾つものカーテンが あらゆる概念を区切るように 引かれていることだろう。 ビルの暴力は 今や宥められ 人々の目的意識や野心、 時間や日付の概念までも 深い樹海の茂みの蔓に 呑み込まれて 錆びていくように 感じる…。 聴覚が視覚に語りかけ、 視覚は 体感をもたらしていく… 僕は背をそらし、息を吸い込む 向かいの自分と 不意に目が合う… 同じように 背伸びをしている。 あの眼のうつす情景に 僕は どんな虚像でうつり、 その奥の世界は どんな色を 求めているんだろう… そんなことを 向かいの自分も 探っているのかも知れない。 同じ内容、同じ出だし、 同じ色のペンで 同じ脱字をした作文を昔、 互いに知らぬまま 提出し 咎められたことがあった… 別々に部屋を出ても こうして 同じ空間に来、 同じ作家の物語に 同じ雨足に酔いしれながら 乾かない袖を 気にしている。 僕は ようやく目をそらし やや暗くなった外界を眺めた。 光の速度は落ち、 闇と森林の見分けがつかない この光景が 今日の 僕の心情… 目にうつる外界 すべては バロメイタアと 認識している。  
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