「窓」にて。

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//// 僕は ペイジを諦め、本を閉じ もとの場所へと返しに行く 立ち上がる全身の動きが、 うまく体躯に 馴染まない… 誰もいない本棚の空間を 空気のように すり抜けて歩く。 水… 僕の両の耳の中心は 今 水色だ… 蛍光灯や カーペット 本棚に並ぶ背表紙 総てが 水色に染まっている…。 本の隙間に 本をねじ込む指さえ 水色に揺らめいて見える…。 視覚は 想像を抱き込み、 蛇口から 新たな認識を 頭へと噴射する 新たな認識で 白いシャツや 紺のパンツは ずぶ濡れになっていき、 裸足の足元から 水たまりが 延々と 四方へと 広がっていく。 思念は生き物であり 、 母なる海原を模倣しながら やがて 波を打つだろう… そこで 認識の微生物が誕生し、 年月を追い 繁殖していく 水色は それらを内包し、 努めて明るく 清々しく 僕に振る舞って見せるようだ ある種の人々が そうするように。  
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