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魔界のなかにある、小さな村の、小さな診療所が揺れた…。
殴られた頬を軽く押さえながら、軽く、困ったように睨みつけてはいるものの…彼のその目に覇気はない。
軽く切った口からは血がしたたるが、それを許すことなく手の甲でそれを拭って…
「あの門の近くには行くなと言ったはずだ。政府軍に見つかれば…『俺もこの村も危ないのはわかってる!』
目の前に立っている…自分を殴った本人…先生の言葉をさえぎるように、何十回も何千回も言い聞かされた台詞を、遮るように言い放った。
ことの発端は、診療所に戻ってすぐ…「ただいま」の台詞を言い終わることなく感じ取られた『聖』の気配。
何前年も稼働していないといえど、天界への扉にはまだかすかに天の香り…。微量な聖力が漂っているらしく、それを体にくっつけて帰ってきたために、先生にばれていまにいたる。
先生は…人一倍聖に敏感だ。
それは自分の所為だと知っていながらも…自分には素直になれないもので…
さきほどぶち当たって軽くへこんだ診療所の壁に背中を預けながら揺れる小さなランプを静かに見つめた…。
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