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「…すみません、勝手な事をしたのはわかってます。ただ…でも…」
一言そう呟いたあと、何も言葉を告げられなかった。
その理由は、微かな恥じらい。
目の前にいる先生は、その先の言葉を読み取ったかのように静かに目を閉じた。
否…目を閉じてから軽く首を横に振った真意は…もはや分からない。
ただ静かに伸ばされた腕、殴られるかと歯を食い縛り目を堅く閉じた人物の頭を静かに撫でて…
目を丸くする黒き悪魔へ向けられた瞳は…先程の行動の真意を導きだすことが可能になろう。
胸元のペンダントに目を落として静かにそれを握り締める悪魔のそれは、たった一つの…自分が母の子である証拠だ。
「母さんに…あえるかもって…」
かすかな沈黙のあと小さくつぶやかれた言葉。
己の方翼、己の血
何より己自身の片親。
姿も名前もわからない…。自分と相対する存在であること以外は何も知らないが…。
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