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「あの子あの子」
源次が1人のウェイトレスをあごで指した。ここ何日か、俺たちはマックをやめて並びの喫茶店『みゆき』に通っている。この前源次が見つけたかわいいウェイトレスを見るためだ。
「確かにかわいい」
その子はウェーブのかかった茶髪で目のパッチリした大人っぽい雰囲気の人だった。
「でもよぉこんだけかわいかったらぜってぇ彼氏いるっしょ」
「やっぱいるかなぁ?大輝聞いてきてくんね?」
「意味わかんねぇし。お前が気になってんならお前行きゃよくね?」
「ほら、俺恥ずかしがり屋じゃん?」
源次は少しかわいこぶった。
「死ね。ってかさ、あの子彼氏いなくても俺らじゃ無理じゃね?だってめっちゃ清純そうじゃん?俺らみたいなのは怖がってるか嫌ってるタイプだと思うぜ?」
俺たちはいわゆる不良で、その子はお嬢様といった感じだったのでどう考えたってつりあわないし、振り向いてもらえるとはとうてい思わなかった。
「お前な?愛があれば身分なんて関係ないのよ」
「源次に愛があったってむこうに愛はねぇじゃん」
「おいおい大輝くん?人の夢は壊しちゃいけねぇよ?」
今日の源次はひどく饒舌でいつも以上に変だった。本気で惚れてしまったというオーラがものすごい勢いで出ていた。
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