序章

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「お前はいつになったらちゃんと『おはよう』を言えるようになるのだ?」 昨年より広がった身長差だけ視線を上げ、僕は半眼で陽子を睨む 「あはっ!上目遣い? 可愛い可愛い!ナデナデしてあげるね」 陽子は人の話も聞かずに僕の頭を撫でる 癖の無い黒のセミロングに小動物を思わせる黒目勝ちの大きな目 黙っていれば可愛らしい女性と言われるだろう しかし僕にとってはプラスチック爆弾並みに危険な存在だ 「こら!気安く頭を触るな! 僕の頭はお前の胸より沢山のものが詰まって…」 ―ザワッ 不意に殺気が肌を刺す その方向は背後から 僕は嫌な予感を胸に抱え振り返ると、燃えるような赤い髪が猛スピードで走ってくる うん、ドンピシャだ 予感の的中に肩を落とし、奇声を上げて迫り来る男を悲しい目で見つめた 「コラァァァ!! 俺の許嫁に手を出すなぁぁ!」 赤い小さな弾丸 今年僕より3㎜身長の伸びた憎たらしい存在だ 「はぁー…やれやれ」 陽子は面倒くさそうに僕の頭から手を離すと、赤い小さな弾丸に向かって一歩進んだ 靴の先で軽くトントンと地面を叩き、陽子は左肩を近づく男へと向ける 「陽子ぉぉー!!俺の傍にいろぉぉー!!」 はい、射程距離 陽子は左足を軸に身を捻り、遠心力を最大限に生かした右足を撃ち出した 「光年先まで離れろ!」 ―ベキィィ!! 「べぶぅっ!」 ――大家 キリト(オオヤキリト) 継承遺伝子【符咒師】
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