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「ねぇ、そろそろだと思わない?」
僕の『どけ』の言葉をあっさりと無視し、僕の席に居座る陽子が訊いてくる
「ん?何がだ?」
主語の抜けた質問に眉を寄せながら、陽子の手を掴み席から退かせようと引っ張る
「何がって、この前のアンケートの結果よ」
アンケート?……ああ、あれか
結構な力で引っ張っているにも関わらず、陽子が動く気配は全く無い
「そう言えば今週が発表予定だったな……この……どけ…」
早く退いてくれないと僕のプライドっぽいのが傷つくぞ
「ねぇ、権太はなんて書いたの?」
陽子は掴まれた手をヒョイっと引き、空いた手を僕の腰に回し軽々と引き寄せる
―トン
ヌイグルミよろしく膝の上に置かれた僕
「私はねー……何だと思う?」
「その前に貴様が傷つけたものは何だと思う?」
男のプライドとその他諸々だ
「朝からピンクのオーラを…」
「ヴァンパイアはいいよな…」
「あんなヌイグルミが欲しい」
ほらみろ
クラスメイトの言葉と視線が黒ヒゲの樽に次々と突きたてられるナイフのようだ
そのうち飛ぶぞ?
「お前…僕をなんだと…」
―ガラガラ
怒りと羞恥に顔を熱くしながら文句を言おうと口を開くと、同時に教室の戸が開いた
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