みんなで登校

11/25

398人が本棚に入れています
本棚に追加
/344ページ
「思い出……か」 田端君の出した答えは誰もが共感するものだろう 「な、何かおかしいか?」 おかしくない だからこそ――である 「いや、正しいだろう それを踏まえ今一度訊きたい 《思い出》とはお前の望む場所でしか作れない代物なのか?」 僕の言葉に田端君が黙り込む 何か答えを探しているようだが、それが見つかることは無かった 「良いか? 大切なのは場所ではなく《気持ち》だ」 田端君ではなく、生徒達を見渡すように言う 「これだけ人間がいて、『場所がN潟県だから思い出作れません』と言うのか?」 仲間達と共に行動する それがどれだけ意義がある事か考えて欲しいものだ 「権太… そうね、情けない事言っちゃったね」 陽子が表情を和らげ言った 他の生徒達も気まずそうに苦笑いを浮かべる その様子に、春馬の表情がみるみる輝き始めた 「お前達!先生は信じて…」 「――だがしかし!」 春馬が調子に乗ろうという出鼻を目一杯に挫く 世の中そんなに甘くないのだ 「このままでは皆、スッキリしないだろう 今回の修学旅行を十年先で笑えるように、先生には皆の気持ちを受け止めてもらう」 ―悪行には罰を 生徒の気持ちが一つになった
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

398人が本棚に入れています
本棚に追加