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「思い出……か」
田端君の出した答えは誰もが共感するものだろう
「な、何かおかしいか?」
おかしくない
だからこそ――である
「いや、正しいだろう
それを踏まえ今一度訊きたい
《思い出》とはお前の望む場所でしか作れない代物なのか?」
僕の言葉に田端君が黙り込む
何か答えを探しているようだが、それが見つかることは無かった
「良いか?
大切なのは場所ではなく《気持ち》だ」
田端君ではなく、生徒達を見渡すように言う
「これだけ人間がいて、『場所がN潟県だから思い出作れません』と言うのか?」
仲間達と共に行動する
それがどれだけ意義がある事か考えて欲しいものだ
「権太…
そうね、情けない事言っちゃったね」
陽子が表情を和らげ言った
他の生徒達も気まずそうに苦笑いを浮かべる
その様子に、春馬の表情がみるみる輝き始めた
「お前達!先生は信じて…」
「――だがしかし!」
春馬が調子に乗ろうという出鼻を目一杯に挫く
世の中そんなに甘くないのだ
「このままでは皆、スッキリしないだろう
今回の修学旅行を十年先で笑えるように、先生には皆の気持ちを受け止めてもらう」
―悪行には罰を
生徒の気持ちが一つになった
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