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時刻は6時
初秋も過ぎ、早朝とも言うべきこの時間は肌寒い
部屋から清美を追い出し、テキパキと制服に着替える
紺色のブレザーに瞳と同じ深紅のネクタイを着用
念入りにアイロン掛けしたシャツは肌触りも気持ちいい
「よし、行くか」
二階の自室から一階のリビングへ向かう前に、洗面所に立ち寄り大きな水槽を見つめる
魚一匹いない水槽には僕の寝癖のついた銀色の髪が映し出されていた
「今日のは手強そうだな…」
ヴァンパイアは鏡に映らない
故に我が家では鏡の代わりに水を使うのだ
猫の耳のようにピョコンと跳ねた寝癖に眉を寄せ、先ずは洗顔を済まし次にクシを持つ
せっせと寝癖を直していると目覚まし時計をも破壊しそうな声が――
「あと2秒ぉぉ!!!」
なっ!?
いつもより早くない!?
理不尽な集合時間に、僕はクシを投げ出しリビングへと走る
意外と広い我が家の廊下を、靴下で滑る足元に苦戦しながら猛ダッシュ
そしてリビングのドアを開け中に入る
「おはようございま…」
「――4秒フラット
飯は抜きだな」
開いたドアの前には真っ赤なワンピース姿の母が腕時計をトントンと叩いている
癖毛一つ見当たらない腰まで伸びた黒髪が、ワンピースの赤をより鮮やかに見せた
――佐久間 璃々亜(サクマリリア)
継承遺伝子【ヴァンパイア】
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