みんなで登校

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――キュッ 乱れた襟元を整え、ネクタイを締め直す 振り向いた先には黒い帽子を深く被った晴香が俯いていた 「たまには普通に登場しろ」 この台詞も8度目だ ヴァンパイアだって年頃になれば思春期を迎える 抱きつかれると……恥ずかしい 僕の言葉に無言で俯いたままの晴香は全身黒い格好だ 襟だけ白い長袖の黒いシャツと黒いスカート 靴も黒いパンプスで、帽子から出た肩下まで伸びた髪も青みがかった黒 「まぁ…そんなに気にするな」 僕の言葉に上げた顔 そこにある瞳だけが紅く、僕と同じ闇の眷族であることを示していた 「……うん……」 晴香のは純粋な好意だけにキツく言う事も出来ない しかし ――ギュッ 今度は正面から抱きしめられる 「…気に…しない…」 「すまん、気にしてくれ」 反省はしても学習しないヤツだ 「……うぅぅ……」 再度渋々と離れた晴香 そんな晴香は僕と身長が同じくらいで、去年から伸びた気配もない せめてお前だけは… そんな思いで晴香を見つめる 「……?……」 僕の視線に小首を傾げる晴香 「いや、何でもない ……帰るぞ」 晴香の家は僕の家の三軒隣なのだ
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