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晴香は基本的には無口だ
公園から10分もかからない帰宅路ではあるが、晴香から話しかけてくるケースは無い
歳は同じだが学校に行っていない晴香
過去に何があったかは知らないが、常人離れした身体能力と普通とは違う紅い瞳
そして鋭利で長い爪を集団が弾いたのかもしれない
勿論僕とて例外ではない
この容貌が受け入れられるまではそれなりに中傷を浴び、それなりに辛い目に合ってきたのだ
「学校はやっぱり行かないのか?」
無口な晴香に話題を提供するのが僕の役目だ
「……うん……」
普段から無表情の晴香だが、《学校》の話になると少し悲しそうに眉を下げる
本当は行きたいのだろう
中々前に進めず足を止めている晴香の、その背中を押してやるのが僕の使命のような気がする
「そうか……
実は僕の学年は来月修学旅行なのだ」
晴香には
『どうしても学校に行きたい』
と思わせるしかない
「…修学…旅行…?」
晴香が小首を傾げる
「そうだ
同学年の仲間達と旅行し、思い出を作るという素晴らしいものだ」
ふふふ、羨ましかろう
きっと晴香の中でウズウズとわき起こるものがある筈だ
「…………行く」
――へ?
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