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「ただいまー」
と言っても「お帰り」と帰ってくる事はない
母は勿論、唯一そう言ってくれる清美は夕飯の買い出しに出ている時間帯だ
慣れているとはいえ若干の寂しさを胸に、部屋に鞄を置きブレザーをハンガーに掛けてリビングに向かう
伸び悩んでいる身長の為に、高2になってから朝昼晩と牛乳を飲んでいるのだ
――ガチャ
リビングに入ると母がテーブルで何やら雑誌を読んでいた
「ただいま」
玄関先でも言ったが、ここでも言わないと僕のHPが減る事になるのだ
普段ならばここで「ああ」とか「うむ」とか気のない返事が返ってくるのだが、雑誌に夢中なのか母は無言のままだ
ま、いいか
冷蔵庫に牛乳を取りにキッチンへと向かう――と
「権太、お前達は何処を巡るんだ?」
母が主語の欠落した質問をしてきた
「巡る?何の話し?」
ドアに伸ばしかけた手を止め、母へと視線を向ける
「皆まで言わねば解らんのか
―――ここだ」
そう言って読んでいた雑誌の表紙を僕へと向けた
『良い旅日本海
海の幸ってなんだろな?』
知るかい
――じゃなく
「な、何のつもり!?」
まさか…、いや、そんな筈はないんだ…今朝発表されたばかりなのだから
嫌な予感が御輿を担いでワッショイワッショイ
「ん?行くんだろう?
N潟県に」
ワッショイワッショイ
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